マラソンコース最後のポイント (日本一の若大将 1962年 東宝)
ではまず動画から。
では次に画像の中から見えるヒントと全体の位置関係を見てみる。 画像01

このような位置関係の場所を郊外から見つけ出せばいいわけだ。簡単と思ったが、なかなかそうもいかなかった。
さてこの鉄筋の建物。かなりの規模だ。学校(大学)か大企業、大病院あたりではないかと考えた。郊外で大きな病院というと、目黒区の国立東京第二病院、現在の東京医療センターが思い浮かぶ。現にSNSでも隣の駒沢公園周辺ではないかという意見が一番多かった。SNSでは他に駒沢大学7号館、都立大学などの校舎が挙がったが、私的には国立東京第二病院のセンが一番臭いと考えていた。実際病院周辺を見てみると「おっ!」道路があったので昭和38年のGoo空撮に落とし込んでみた。

▼Goo空撮とマラソンコース_画像02

まず大きな鉄筋の建物@だが、二棟あるうちの北側(赤)と仮定した。南側の棟は階数も低く、壁面に凹凸がないからだ。壁面の凹凸に付いては画像01を見ていただければわかる。
ABの煙突については、残念ながらこの画像からは確認できないが、これだけの規模の建物、複数の焼却炉があるのは普通だろう。
Cの三菱スリーダイヤは、ガソリンスタンドか燃料店だと推測する。まさか三菱鉛筆の倉庫なんてことはないだろう。ここも方向fだけで確認はできていない。
Dのマラソンコースだが、左カーブでピッタシの場所だ。ただこのカメラ位置からの撮影で、果たして建物の側面Gが見えるかどうかは疑問が残る。
EFの木造っぽい建築物については、撮影範囲と書かれた周辺に複数ある。これらのうちのどれかが写り込んだと考えても不自然ではない。

「よし!ここで特定!」と浮かれてしまったが、やはりあのカメラ位置で建物@壁面Gが見えるかどうかが引っかかる。
カメラがもう少し東であれば
側面Gはしっかり見えるだろうが、そこには道路が無い。また学校らし建物があるため、側面Gは隠れてしまう・・・・・

結局特定には至らず、このまま放置プレイになってしまった。

それから約2年、今年に入って
鰤ほぐしさんより最終の報告が届いた。


鰤ほぐしさん@の建物については、当初より国立東京第二病院と考えていたようだ。

今回は「結論ありき」で、まずその場所から紹介することとする。ここだ!

▼若大将のマラソンコース最後のポイント_
画像03
じぇじぇじぇ!?って思うでしょ?私も正直最初は思った。でもここで間違いないのである。位置的には私が最初に特定しかかった場所、画像02とは病院をはさんで真反対の位置になる。果たしてここから病院の建物が見えるのか???
一つ一つ検証していきたいと思う。

検証@ この場所について
この場所は現在駒沢公園の「ドッグラン」という施設になっている。いわゆる犬を放して自由に遊ばせる場所だ。
昭和38年頃はこんな感じだ。

▼駒沢公園ドッグラン付近空撮(昭和38)_
画像04
翌年開催の東京オリンピックに間に合わせるため、工事の真っ最中である。から分かれる薄茶色の部分がマラソンコースで、の辺りが撮影地点になる。もともとこんな道路はなかったが、工事のために造られたようだ。
このあたりを車で走られた方はお分かりと思うが、
辺りから道路は下り、で一番低くなり再び上りになる。鰤ほぐしさんから頂いた資料「東京オリンピック」によれば、公園のメインアプローチを造るに当たり、駒沢通りを拡幅し、ついでにの部分を敷地標準地盤面より5m掘り下げ、観客乗降用のバスストップとしたとある。
よって、マラソンコースとなった道路自体は、大した高低差もなくフラットな状態で現在の屋内競技錠前辺りまで続いていたと推測できる。

検証A 大きな鉄筋の建物について
次に、
画像01左上に見える大きな鉄筋の建物。この建物が国立東京第二病院の病室棟であるか、以下3枚の画像で調べてみる。
▼建物拡大画像_
画像05
少し見にくいが現状ヒントとなる点を7ヶ所挙げてみた。
ではこれらをGoo空撮(S38)で確認してみる。

▼病室棟付近拡大(S38Goo空撮)_
画像06
ほとんど真上からの撮影なので窓等が見えないのは仕方がないが大小の塔屋屈曲部分はしっかり確認できる。ちょっと見にくいが煙突AB(AB)はどちらも右方向に写っているのがお分かりいただけるだろうか?どちらも影は上方向に見えている。
では最後に昭和39年9月撮影の画像を見てみる。映画公開から2年後になる。

▼国立東京第二病院空撮(S39.09)_
画像07
これを見ると画像05で挙げた7ヶ所のヒントがすべて確認できるが、ただ1ヶ所側面の窓3つが5つになっている。まぁこれは
画像05の下の部分が前の障害物で見えなかっただけのこと。実際には5階建てである。
ここまでで建物についての検証を終え次に進む。

検証B 撮影地点からの見え方
実際にカメラを置いたと思われる場所から病院方向を見ると・・・・・

▼撮影方向_
画像08
ご覧のようにおもしろいほどピッタシハマってしまった。

この辺りまでくるとだいぶ佳境に近づいてきた。でもまだある。三菱のスリーダイヤの看板だ。

検証C 三菱スリーダイヤの看板
まず拡大画像を見ていただく。

▼三菱スリーダイヤ拡大画像_
画像09
屋根の上、かなり高い位置にある。一番考えやすいのはガソリンスタンドだろうか?撮影地点から東の方向を住宅地図で探してみた。

▼住宅地図(S43)_
画像10
交差点の部分を拡大してみた。「給油所 西武ドライブセンター」と記載がある。そう、こんなお誂えの位置にガソリンスタンドがあったわけだ。でも銘柄がない。当時は今は無き大協や丸善、ストーク(九州石油)などが乱立している時代。銘柄表記がないとお手上げだ。仕方ないのでダメもとで「Yahoo!知恵袋」で聞いてみた。回答者は1名。答えは何と三菱であった。もうこれを信じるしかない訳で、他から何を言われようが受け付けない!

検証D 最後で最大の問題点
さて検証項目も大体出揃ったが、最後にどうしても白黒させないと終わらない項目がある。
これまでは平面上で線を引き「見えた〜 見えた〜」と大騒ぎしてきたが、果たしてその場に立った時に本当に見えるだろうか?という疑問である。
前述の空撮やMAPを再度見直していただければ気がつくと思うが、病室等の前に受付・診療棟が写っている。
画像07でお分かりのようにこの棟は3階(一部4階か?)建てである。2階分低いといっても、画面に写り込むと思われる。無理矢理はめ込んでみたので無理があるが、こんな感じに見えるのではないかと思われる。。

▼受付・診療棟付き_
画像11
赤の部分だけど、ちょっとひどいね。まぁご勘弁ください。
ではこの建物一体どこに行ってしまったのだろう?やっぱり場所が違うのか???といろいろ悩んでたところに
鰤ほぐしさんから1枚の空撮画像が届いた。

▼空撮1963(S38)&1961(S36)_
画像12
ここで一番の注目点は国立東京第二病院だ。

お分かりのように、1961年では後ろの
病室等は右(東)半分を残し竣工間近なようだ。しかし前の受付・診療棟については一部分の基礎工事らしきものは確認できるが、まだまだこれからという状況だ。という事は、この前後2棟の建築時期にはズレがあるということがわかる。ではこの2棟はいつ竣工したのだろうか?

この疑問についていろいろ調べたが、かなり古い話、建物自体も現存してないので全く手がかりがつかめなかったが、ある方面よりここを建てたゼネコンが判明した。早速ゼネコンに問い合わせたところ、病室棟の竣工が62年9月、受付・診察棟が63年3月との回答があった。

これにより最大最後の疑問が解けた。
ロケ当時、
受付・診療等が建っていなかったため、病室等が障害物なく見えたということである。

また駒沢通りだが
マラソンコースとの分岐点以西道路がないのがわかる。画像04でも書いたが、道路掘り下げ工事のため、この辺りをほじくり返してるのではないかと推測する。よってこの時期はマラソンコースを迂回路としていたのではないだろうか。掘り下げ工事が終了した63年には迂回路(マラソンコース)は工事車両用道路に変更された。
説明がごちゃごちゃしてきたので、以下のような時系列にまとめてみた。
1961(S36)年 国立東京第二病院受付・診療棟着工
公園メインアプローチ付近掘り下げ工事により、駒沢通りを迂回路に変更。
1962(S37)年 6月中旬 日本一の若大将ロケ。
尚、クランクインは6月初旬、クランクアップは6月25日。7月14日 公開。(クランクイン、アップ時期は、『若大将グラフティ(1995年 角川書店)』での同作品監督、福田純氏のインタビューから)
9月 国立東京第二病院病室棟竣工
1963(S38)年 3月 国立東京第二病院受付・診療棟竣工
メインアプローチ付近掘り下げ工事完了し、駒沢通りを通常に戻す。迂回路は引続き工事用車両専用とする。

では〆としてこれまでの検証事項を画像に載せてみる。

▼若大将マラソンコース最後のポイント_
画像13
これでだいたいお分かりいただけるだろう。ただ駒沢通りの文字がある辺りは、この時点では道路がなかったと推測する。

では最後に
鰤ほぐしさんが現地にて撮影した画像に上の画像13を合わせたFlash画像を見ていただく。
▼これでよくわかる!_
画像14
正面の広場がドッグランである。駒沢通りのレベルから見て、当時より若干掘り下げられてるようだ。残念ながら現在では病院の建物は全く見えない。

〔このシーンの出演者〕
 ・加山雄三 ・大木正司(伊田天一)

〔ロケ地情報〕
名称:駒沢オリンピック公園ドッグラン内
住所:東京都目黒区八雲5丁目西
交通:東急バス急バスがたくさん出てますので問合わせてみてください。

今回も長々とお付き合いいただき誠にありがとうございます。
鰤ほぐしさん荻窪東宝さんはじめ、ご協力頂きました全ての方に厚く御礼申し上げます。

これにて一件落着とする。

麻布田能久からお越しの方は >>>
こちらに直接お越しの方は、
是非お立ち寄りください!>>>

Copyright (C) MARU-9 DEPARTMENT STORE Co.,Ltd. All Rights Reserved
inserted by FC2 system